MEP HyperCelRを用いてIgMの精製が可能かどうかの検証-2
■編集:NPO法人サイエンス・コミュニケーション
■実験協力:お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーションセンター 中谷友紀
概要
MEP HyperCel は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の回収や精製用に特別に設計された、高結合性・選択性をもつ吸着剤である。MEP HyperCel は動物の血清や腹水、細胞培養上清などのサンプル中の IgG 抗体を効率よく回収・精製できる。pH7~8 の条件下では、抗体に対して疎水的相互作用により吸着するが、溶出時に pH4 といった酸性条件にす ると静電反発作用が発生し、抗体が吸着剤から脱離することで抗体の回収を可能にしている。また MEP HyperCel はアルカリに対して非常に安定な化合物であり、1M 水酸化ナトリウムで繰り返し洗浄して用いるこ とが可能である。
一方、IgMは5量体構造として存在し、分子量も900kDaと巨大な分子である。しかしプロテインAやGなど に対するアフィニティーが低く、通常ゲルろ過クロマトグラフィーで精製が行われており、一度に処理できる サンプル量が少ないこと、処理時間も大きくかかることが問題とされている。
前回までの実験で、MEP HyperCelを用いて腹水に含まれるマウスIgMの回収・精製を試み、簡便かつ効率よ く精製できることが確認されている。今回はハイブリドーマの培養上清を用い、MEP HyperCelを 用いてより大容量のサンプル(数百mL単位)からマウスIgMを精製し、そのパフォーマンスを検討したので 紹介する。
材料と方法
抗体モデル試料
- ハイブリドーマ培養上清
(無血清培地を使用。マウス由来 IgM を産生するハイブリドーマより回収)
- クロマトグラフィー担体
BioSepra クロマトグラフィー担体“MEP HyperCel” Pall(株)製
試薬
- 50mM Tris-HCl,pH8.0
- 50mM 酢酸ナトリウム溶液 pH5.0 および pH4.0
実験方法
MEP HyperCellカラムを使ったハイブリドーマHybrydoma培養上清からのマウスIgM精製
- ハイブリドーマ培養上清を用意(マウス IgM 産生細胞を約2週間培養。上清は採取後、ろ紙にてろ過)
- サンプルロード:培養上清を300mL添加。液体が自然に落下するのを待つ(以下同様)。
pH、イオン強度は無調整 - 洗浄:50mM Tris-HCl,pH8.0
- 溶出:50mM 酢酸ナトリウム溶液 pH5.0 #1~17
A280nm のピークより、うち#3~10 を回収 - 溶出:50mM 酢酸ナトリウム溶液 pH4.0 #18~34
うち#21~29 を回収
結果
1)MEP HyperCelカラムによるマウス IgM精製のクロマトグラム

Fraction #1~#17 (blank/酢酸バッファーPH5) #4~#12を回収
Fraction #18~#34 (blank/酢酸バッファーPH4) #21~#29を回収
ハイブリドーマ培養上精300mLlを精製
total :(PH5、#4~#12) 1mgの精製抗体を取得
total :(PH4、#21~#29) 5mgの精製抗体を取得
2)MEP HyperCelカラムによるマウス IgM精製の電気泳動

1 Lowmarker
2 PH4
3 PH5
精製抗体濃度(5μg/レーン)
pH5で溶出された抗体も、pH4で溶出された抗体(大部分がこちらで溶出)も、SDS-PAGEでは特にバンドパタ ーンに差がみられなかった。いずれも一度のカラムワークでIgMが純度よく精製されている。

Fraction #1~#17 (blank/酢酸バッファーPH5) #4~#12を回収
Fraction #18~#34 (blank/酢酸バッファーPH4) #21~#29を回収
ハイブリドーマ培養上精300mLlを精製
total :(PH5、#4~#12) 1mgの精製抗体を取得
total :(PH4、#21~#29) 5mgの精製抗体を取得
2)MEP HyperCelカラムによるマウス IgM精製の電気泳動

1 Lowmarker
2 PH4
3 PH5
精製抗体濃度(5μg/レーン)
pH5で溶出された抗体も、pH4で溶出された抗体(大部分がこちらで溶出)も、SDS-PAGEでは特にバンドパタ ーンに差がみられなかった。いずれも一度のカラムワークでIgMが純度よく精製されている。
結果まとめ
マウスIgMの精製は精製度・収量ともに良く、MEP HyperCelは数百mL単位の培養上清を処理する際にも非常 に有用であると判断する。
データには示していないが、カラムスルーの培養上清中では、10倍濃縮でも抗体価が認められなかったので、 培養上清中の抗体はほとんど回収できているのではないかと考えていいる。
モノクローナルにクローニングされた細胞の培養上清であるにも関わらず、pHを変える事で(pH5とpH4)溶 出されるピークが複数出てきたことは不思議である。通常のプロテイン精製では区別できない、何 か新しいキャラクターを持つ抗体が MEP HyperCelにて分離されているのかもしれない。
データには示していないが、カラムスルーの培養上清中では、10倍濃縮でも抗体価が認められなかったので、 培養上清中の抗体はほとんど回収できているのではないかと考えていいる。
モノクローナルにクローニングされた細胞の培養上清であるにも関わらず、pHを変える事で(pH5とpH4)溶 出されるピークが複数出てきたことは不思議である。通常のプロテイン精製では区別できない、何 か新しいキャラクターを持つ抗体が MEP HyperCelにて分離されているのかもしれない。
考察
本実験では、抗体精製用として開発されたMEP HyperCel吸着剤を用いて、ハイブリドーマ培養上清中のIgM を単離・精製できるかを検討した。事前のサンプル調製なく、自由落下による簡便なカラム操作で数百mL単位の培養上清中のIgMを精製することができた。 MEP HyperCelはIgGタンパク質精製用に開発されたものであるが、IgMタンパク質も同様に簡便に精製でき ることが、今回の実験から明らかにすることができた。IgM はプロテイン A や G に対する接着性が低く、ゲル ろ過により精製を行うことが多いが、ゲルろ過クロマトグラフィーでは一度に処理できるサンプル量が少なく 処理時間も大きくかかることが問題とされている。本製品は時間と労力をかけて精製していたIgMタンパク質 を簡便に大量精製できる、優れたツールであると言えよう。
モノクローナルにクローニングされた細胞の培養上清であるにも関わらず、面白いことにpHを変える事で (pH5 と pH4)溶出されるピークが複数現れた。今回のデータには示していないが、各pH毎の溶出抗体について抗体の反応性に差があるかを調べたところ、反応性自体はほぼ同等で変化がなかった。機能面でキャラクタ ーに差異が出るか否かを解析中である。
MEP HyperCelの唯一の弱点としては、疎水性結合によってタンパク質吸着を行うため、サンプル中にアルブミンに代表される疎水性タンパク質が存在する場合にこれらのタンパク質も同時に担体に吸着されてしまうことがある。今回のようにアルブミンを含まない無血清培地培養上清からの IgM 抗体精製はこの点を心配する 必要がなく、大量のサンプルを精度よく処理でき、また繰り返し(すなわち安価に)使用可であるというMEP HyperCelの真価を発揮する場であると考える。
2009-03-17 07:33:29
モノクローナルにクローニングされた細胞の培養上清であるにも関わらず、面白いことにpHを変える事で (pH5 と pH4)溶出されるピークが複数現れた。今回のデータには示していないが、各pH毎の溶出抗体について抗体の反応性に差があるかを調べたところ、反応性自体はほぼ同等で変化がなかった。機能面でキャラクタ ーに差異が出るか否かを解析中である。
MEP HyperCelの唯一の弱点としては、疎水性結合によってタンパク質吸着を行うため、サンプル中にアルブミンに代表される疎水性タンパク質が存在する場合にこれらのタンパク質も同時に担体に吸着されてしまうことがある。今回のようにアルブミンを含まない無血清培地培養上清からの IgM 抗体精製はこの点を心配する 必要がなく、大量のサンプルを精度よく処理でき、また繰り返し(すなわち安価に)使用可であるというMEP HyperCelの真価を発揮する場であると考える。
2009-03-17 07:33:29















