IPTG不要のオートインダクションは本当に便利なの?
メルク オーバーナイトエクスプレスを用いたタンパク質発現の検証


概要

実験プロセスデータは試薬と装置の組み合わせや手順を視覚的に紹介することで、学生および若手研究者やこれまでに扱ったことのない試薬や装置の使用を考える研究者の研究サポートになることを目的としたものです。
今回は話題のIPTG不要の自動発現誘導培地を用いて、タンパク質の発現量を一般的なIPTGによる手法と比較することで検証してみました。

材料と方法

今回使用するプラスミドのNovagen pET-43.1a(+)には、NusAタンパク質遺伝子がコードされています。そして発現により産生したNusAタンパク質にはHis・Tagが付加されるため、His Bind Purification Kitで容易にアフィニティー精製が可能です。
このプラスミドをコンピテントセルBL21にトランスフォーメーションさせ、OEではそのまま培養、対照のLB培地で培養するほうでは対数増殖期に相当するOD=0.6付近で発現誘導物質IPTGを添加しました。
培養終了後は、 BugBuster®Protein Extraction Reagentを使用してトータルタンパク質の抽出、続けてHis・Bind®Purification Kitを使用してNusAタンパク質を精製しました。確認はSDS-PAGEで行いました。
培地

細胞およびプラスミド

タンパク質抽出用試薬

機器

培養容器

実験プロセス

(1)トランスフォーメーション(大腸菌の形質転換)

氷上で冷やしておいた空のマイクロチューブそれぞれに、トランスフォーメーション用、ポジティブコントロール用、ネガティブコントロール用にコンピテントセルを入れました。


次にトランスフォーメーション用にはプラスミドpET-43.1a(+)DNAを1μl(1ng)を入れ、ポジティブコントロール用には付属のテストプラスミドを1μlを加えました。ネガティブコントロール用には何も加えませんでした。


氷上で5分間静置しました。


42℃のアルミブロック恒温槽にさして、30秒間ヒートショックしました。 その後再度氷上で2分間静置しました。SOC培地80μlを加え、トータル100μlにしました。

(2)前培養

0.9mlのLB培地の入った15ml遠沈管に、形質転換溶液100μlを入れました。


キャップを空気が入る程度に弛めに閉め、バイオシェーカーのスプリングネットに、 培養液の通気・攪拌をよくするために、スピッツ管を斜めに挿しました。


37℃・180rpmで1時間往復振とうしました。

(3)トランスフォーメーションチェック

アンピシリン(終濃度50μg/ml)を含んだLBアガープレートを用意しました。


それぞれの前培養液から100μlを区分線を書いたプレートにプレーティングしました。 次に37℃にしたインキュベータに入れ、一晩静置培養しました。


ネガティブコントロールの領域にはコロニーは形成されておらず、トランスフォーメーション(NusA)の領域と ポジティブコントロールの領域にコロニーが形成されていることを確認しました。 この結果からトランスフォーメーションが完了したと判断しました。

(4)本培養

炎で滅菌したピンセットで爪楊枝をつまみ、爪楊枝全体をかるく炙って滅菌しました。 爪楊枝の先端をブルーコロニーに触れ、爪楊枝をOEメディウムの入った遠沈管に投じました。


空気が入る程度にキャップを弛めに閉め、37℃・180rpmで往復振とうしました。 対照のLB培地+IPTGで発現誘導する従来法では、OD600=0.54の時点でIPTGを終濃度1mMになるように添加しました。 本培養時間は両者ともに24時間としました。培養終了後のOD値はODOE=4.3、ODLB=3.0でした。

(5)タンパク質抽出・精製

本培養液1.5mlを2.0mlマイクロチューブにとり、10,000×gで10分間遠心して集菌し、上清を除去しました。


300μlのBugBuster Extraction Reagentを加え、 DNA,RNAを消化するために0.3μlのBenzonase (25U/μl)加えて懸濁しました。 これにより、溶液の粘性が低下し、さらさらした状態になりました。



目的のタンパク質NusAにはHis・Tagが付いているので、メルク社のHis Bind Purification Kitを使用して、精製しました。 操作は付属のマニュアルにしたがい、各バッファーを入れて転倒攪拌、遠心を繰り返しました。

(6)たんぱく質の確認SDS-PAGE

スラブ式ゲル電気泳動セットに、SDSゲルを充填したガラスをセッティングし、 バッファー槽にトリス-グリシン-SDS泳動バッファーを注ぎました。


泳動セッティングしたSDSアクリルアミドゲルの各ウェルに、 サンプルバッファーと混合したタンパク質試料をマイクロピペットでチャージしました。


20mA定電流で、100分間の泳動をしました。


ゲルを酢酸メタノール固定液で10分間×2回振とうした後、クマシーブルー(CBB)染色液の入った 容器に入れて8の字振とう機で30分間振とうしました。

結果と考察



2007-07-20 15:41:32

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