ディスポーザブルなプラスチック製BD Falcon 三角フラスコを用いた
293細胞の培養とタンパク質発現
■編集:NPO法人サイエンス・コミュニケーション
■実験協力:お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーションセンター 佐々木加代子
概要
三角フラスコは動物細胞や酵母・バクテリア等の浮遊培養を数十mL〜数百mLスケールにて行う際、広く培養容器として用いられている。従来よりのガラス製フラスコに加えて、近年ではプラスチック製のディスポーザブルな三角フラスコがコンタミネーションリスクの低減、軽さと丈夫さ、洗浄の手間を省けるなどの利点からよく用いられるようになっている。
BD Falcon三角フラスコは光学的透明性に優れたポリカーボネート製の本体と、ガス交換が可能なベンテッドキャップと密閉キャップが一体化した斬新なキャップが付属した滅菌済みのフラスコである。今回はこのBD Falcon 三角フラスコを用い、FreeStyle 293-F細胞の培養とタンパク質の発現を行い、その効率を検討したので紹介する。
材料と方法
培養容器
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プラスチック製ディスポーザブル三角フラスコ
(BD Falcon三角フラスコ、平底 125mL:製品番号355117、250mL:製品番号355121、500mL:製品番号355125)
細胞・培地・試薬
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細胞、培地、トランスフェクション試薬
FreeStyle 293-F Cells
293 fectin
FreeStyle 293 Expression Medium
Opti-MEM I Reduced-Serum Medium
pCMV SPORT-βgal vectorの同封されたキット(FreeStyle 293 Expression System、invitrogen) - β-gal assay kit (invitrogen)
- pZsGreen vector (クロンテック)
- 液体窒素
- 蒸留水
機器
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ガス供給可能な恒温振とう培養機(CO2-BR-40LF、タイテック)

*細胞培養中、実験室内の光が細胞へのストレスとなる可能性があるため、インキュベーターに遮光カバーを被せた。 - 蛍光分光光度計
- 明視野および蛍光顕微鏡
- マイクロプレートリーダー
- ボルテックスミキサー
- ジュワー瓶
実験方法、結果
実験1:
BD Falcon三角フラスコを用いたFreeStyle 293-F細胞の培養。増殖率、生存率の観測
BD Falcon三角フラスコを用いたFreeStyle 293-F細胞の培養。増殖率、生存率の観測
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FreeStyle 293-F細胞を起こし、FreeStyle 293 Expression mediumにて培養。
培養条件は37℃、振盪速度125rpm、CO2 8%を20mL/minにて通気。
125〜250mLのBD Falcon三角フラスコで2〜3代培養する。(細胞密度が1〜2×106cells/mLに達したら、生存率が90%以上あることを確認した後、3×105cellsに希釈し継代する)。
*FreeStyle 293-F細胞は塊になりやすいので、細胞数の計測時には少量を96wellのマイクロプレート等に移した後よくピペッティングし、細胞塊をバラバラにしたのち計測する。 -
1で培養した細胞を各容積のBD Falcon三角フラスコに1×105cells/mLとなるよう希釈し分注
BD Falcon三角フラスコに振とう培養機のガス強制通気用の栓をとりつけたところ。
使用した各フラスコの容積と培地量(培養容積)は下記の通り。
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37℃、振盪速度125rpm、CO2 8%を20mL/minにて通気し培養。

約24時間毎にフラスコから一部を取りトリパンブルー染色。生細胞数,viabilityをカウントする。
- 125、250mL容積のフラスコでは0〜170hrまで培養
- 500mL容積のフラスコでは0〜92時間まで培養した(こちらの細胞は引き続き実験2に使用した)。
各フラスコで培養した際の293-F細胞の細胞密度、生存率を下のグラフに示す。
縦軸:細胞密度(×105cells/mL) 横軸:時間(hr)

縦軸:生存率(%) 横軸:時間(hr)

BD Falcon三角フラスコ内で細胞は良く増殖し、1×105cells/mLでの培養開始から114時間で3×106cells/mL以上の高密度に達した。
各フラスコの細胞は〜114時間まで95%以上の生存率を示した。これ以降、次第に生存率は低下していく。
実験2: BD Falcon三角フラスコを用いた
FreeStyle 293-F細胞の培養、ベクターのトランスフェクション、タンパク質発現
FreeStyle 293-F細胞の培養、ベクターのトランスフェクション、タンパク質発現
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<細胞の準備>
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FreeStyle 293-F細胞を培養。Viabilityが90%以上であることを確認しながら培養し、>1×106に達したらトランスフェクション用に使用。
*上記実験1-3のプロセスで500mL容積フラスコ/150mL培地量で培養したものが、培養開始後92時間で1.5×106cells/mLに達したため、この細胞を使用した。 -
各フラスコの細胞を50mL容積の遠沈管に分注。
1000rpm、5min遠心し、上清を捨て、新しい培地を各チューブに35mLずつ加える。
細胞塊をよくピペッティングでほぐした後、さらに45秒ほど強くボルテックスをかけ、細胞がsingle cellになるようにする。
(細胞が塊のままだとトランスフェクション効率が低下するため注意)。 -
細胞数と生存率をカウント。細胞がほぼsingle cellとなっていること、生存率が>90%であることを確認。
新しい250mL容積のBD Falcon三角フラスコに7.5×107cells/70mLとなるよう希釈・分注し、Lipid/DNA complexの調整が終わるまでインキュベーター内で振盪しておく。 - Opti-MEM I Reduced-Serum Mediumはあらかじめ37℃に温めておく。
- DNA (pCMV SPORT-βgal vector、またはpZsGreen vector :75μg)を15mL容積の遠沈管に取り、Opti-MEM I で2.5mLに合わせ、穏やかに混ぜる。
- 293fectin 150μLを15mL容積の遠沈管に取り、Opti-MEM I で2.5mLに合わせ穏やかに混ぜる。室温で5分間インキュベートする。 (長時間インキュベートするとトランスフェクション効率が落ちるため注意)
- 5と6を加え穏やかに混ぜたのち、室温で20〜30分インキュベートする。
-
7で調整したLipid/DNA Complexを、3で準備しておいた細胞に加える。
37℃、振盪速度125rpm、CO2 8%を20mL/minにて通気培養。
**トータルで使用した細胞数、試薬**
Final transfection volume: 75mL /250mL容積フラスコ
細胞数:7.5×107cells (1×106cells/mL)
プラスミドDNA量:75μg
293fectin量:150μL
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24時間毎にフラスコから一部を取り、各タンパク質の発現具合を観察、測定。
- pCMV SPORT-βgal transfected cells:β-gal assay kitにてβ-galactosidase 活性を測定する
- 各時間ごとに培養液を回収、うち500μLを1.5mLマイクロチューブに取り、1200rpm, 5min 遠心する。
- 上清を捨て、PBS 1mLを加えピペッティング。再度1200rpm, 5min 遠心する。
- 上清を捨て、沈殿した細胞に100μLのLysis Bufferを加えVoltex。よく細胞塊を拡散させる。
- 液体窒素にて急速凍結→37℃の温水にて解凍を2回くりかえし細胞をLysisさせる。
- 12000rpm, 4℃, 5min遠心。上清を新しいマイクロチューブに移す。
- 各サンプルを一部とり蒸留水で100倍希釈。
これを10μL、1×Cleavage buffer 50μL、ONPG 17μLを96ウェルのマイクロプレート内にて混合。37℃、30minインキュベートする。 - Stop Bufferを125μL加える。A420を測定。
ブランクとしてpZsGreenをトランスフェクトした細胞のLysateを同様に調整し測定する。 - A420の値からブランクの平均値を引く。
下記の式で分解されたONPG量を換算する。
nmoles ONPG hydrolyzed=(OD420)(2.02×105nL)/(4500nL/nmole-cm)(1cm)
ここから、もとの細胞培養液1μL あたり30minで何nmolesのONPGを分解したか換算する。
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pZsGreen transfected cells:蛍光顕微鏡にて観察、および蛍光分光高度計にてZsGreenの蛍光量を測定
- 各時間ごとに培養液を回収。うち1mLを1.5mLマイクロチューブに取り、1200rpm, 5min 遠心する。
- 上清を捨て、PBS 1mLを加えピペッティング。再度1200rpm, 5min 遠心する。
- 上清を捨て、PBS1mLを加えピペッティング。再懸濁する。
- うち適量をスライドグラスにとり、蛍光顕微鏡にて観察。
ネガティブコントロールとしてpCMV SPORT-βgalをトランスフェクトした細胞も同様に調整し観察。 - PBSに再懸濁した細胞を400μLとり、さらに400μLのPBSを加える。(細胞密度:当初の1/2)。
蛍光分光光度計にて Ex:480nm Em:506nmの蛍光強度を測定する。
ブランクとしてpCMV SPORT-βgalをトランスフェクトした細胞も同様に調整し測定する。
- pCMV SPORT-βgal transfected cells:β-gal assay kitにてβ-galactosidase 活性を測定する
<Lipid/DNA Complexの調整>
<Transfection>
pCMV SPORT-βgal transfected cells, 細胞培養液1μL あたりのβ-galactosidase活性
縦軸:ONPG Cleavage (nmoles/μL cells/30min) 横軸:Time after transfection(hr)

トランスフェクション後48〜72時間で高いβ-gal活性が見られた。
結果2-2
pZsGreen transfected cells,
ZsGreenの蛍光強度(Ex:480nm Em:506nm 細胞密度:元の培養液の1/2)
縦軸:intensity 横軸:Time after transfection(hr)

pCMV SPORT-βgalをトランスフェクトした細胞と同様に、pZsGreenをトランスフェクトした細胞でもトランスフェクション後48〜72時間でZsGreenの強い蛍光が見られた。
pZsGreen transfected cells, 蛍光顕微鏡下でカウントしたZsGreen発現率のグラフを下に示す。
縦軸:Green蛍光を示した細胞(%) 横軸:Time after transfection(hr)

トランスフェクション後48〜72時間で7割程度の細胞にZsGreenの発現が見られた。
pZsGreen transfected cells, 明視野および蛍光顕微鏡で観察した写真を下に示す。
Time after transfection(hr)


Control:pCMV SPORT-βgal transfected cells, BD Falconフラスコにて培養 48hr

自家蛍光はごく薄い。
*Marge画像は省略。
トランスフェクション後48〜72時間で7割程度の細胞にZsGreenの発現が見られた。発現の強さは細胞により異なった。
細胞の生存率は別途トリパンブルー染色したところ、72時間までは8割程度、96hrでは6割程度であった。
BD Falcon三角フラスコ培養で、293-F細胞の培養・トランスフェクションともに問題なく行えることが確認された。
考察
今回の実験では、ディスポーザブルなBD Falcon三角フラスコを用い、FreeStyle 293-F細胞の培養とタンパク発現の効率について検討を行った。
125、250、500mL容積の各BD Falcon三角フラスコ内で293-F細胞は効率よく増え、1×105cells/mLでの培養開始から114時間で3×106cells/mL以上の高密度に達し、この時間での生存率は95%以上であった。フラスコサイズ間での差は特に見られなかった。
タンパク質の発現は293-F細胞にpCMV SPORT-βgal、およびpZsGreenをトランスフェクトし確認した。
pCMV SPORT-βgalをトランスフェクトした細胞は、トランスフェクション後24時間からβ-galactosidase活性が見られ、48〜72時間で最も高い活性を示した。pZsGreenをトランスフェクトした細胞は、トランスフェクション後24時間から緑色蛍光が見られ、48〜72時間で強い蛍光が確認された。
BD Falcon三角フラスコで、FreeStyle 293-F細胞の培養とタンパク発現が問題なく行えることが確認できた。
今回の培養には用いなかったが、BD Falcon三角フラスコには標準でガス交換可能なベンテッドキャップと密閉キャップが付属している。ベントキャップを用いた培養を行う際や、培養後の細胞を密栓して持ち運ぶ際に便利である。動植物や微生物の培養のほか、試薬調整および保存など様々な用途に有用な容器であると考える。
2010-05-19 09:57:22
125、250、500mL容積の各BD Falcon三角フラスコ内で293-F細胞は効率よく増え、1×105cells/mLでの培養開始から114時間で3×106cells/mL以上の高密度に達し、この時間での生存率は95%以上であった。フラスコサイズ間での差は特に見られなかった。
タンパク質の発現は293-F細胞にpCMV SPORT-βgal、およびpZsGreenをトランスフェクトし確認した。
pCMV SPORT-βgalをトランスフェクトした細胞は、トランスフェクション後24時間からβ-galactosidase活性が見られ、48〜72時間で最も高い活性を示した。pZsGreenをトランスフェクトした細胞は、トランスフェクション後24時間から緑色蛍光が見られ、48〜72時間で強い蛍光が確認された。
BD Falcon三角フラスコで、FreeStyle 293-F細胞の培養とタンパク発現が問題なく行えることが確認できた。
今回の培養には用いなかったが、BD Falcon三角フラスコには標準でガス交換可能なベンテッドキャップと密閉キャップが付属している。ベントキャップを用いた培養を行う際や、培養後の細胞を密栓して持ち運ぶ際に便利である。動植物や微生物の培養のほか、試薬調整および保存など様々な用途に有用な容器であると考える。
2010-05-19 09:57:22















