合成リガンドレジンMEP HyperCelによる抗体精製
-効率的なアルブミン除去方法の検討-

■NPO法人サイエンス・コミュニケーション 鈴木 武士

概要

合成リガンドレジンMEP HyperCelによる無血清培地からのマウスIgG1の精製を報告する。 MEPはProtein AやProtein Gと比べて
  1. 由来生物種や抗体のサブクラスが不問
  2. 弱酸性溶出(pH4で溶出、Protein AやProtein GはpH2.8前後が一般的)でタンパク質の失活リスクを低減
  3. アルカリ洗浄による繰り返し使用
  4. 生物由来材料の不使用の点で有利である
しかし、イオン交換疏水的相互作用を基盤とした精製なので、蛋白質種が多い場合は高純度に精製することはできない。無血清培地でも比較的高濃度のアルブミンを含む培地も多く、合成リガンドによる精製では抗体と分離できないことが多い(参考資料)。
本実験では、精製工程にオクタン酸ナトリウムによる洗浄を加えることにより、アルブミンの除去を試みた。その結果、89.2%のIgG1精製画分を得ることができた。工程の追加によるIgGのロスも認められないことから、洗浄工程の追加により初期精製においてMEP HyperCelで十分な性能を発揮できることがわかった。

材料と方法

材料

  • マウス由来IgG1産生ハイブリドーマの培養上清濃縮液
    BD Cell MAb無血清培地(日本ベクトン・ディッキンソン、アルブミン1 mg/mLを含む)により培養したのち、LVセントラメイト(日本ポール)により細胞を除去、濃縮・脱塩を行った
    ((蛋白質濃度3mg/mL、濃縮倍率:約20倍)

試薬

  • AcroSep MEP HyperCel(日本ポール)
    (カラム容量:CVは1 mL)

機器

  • ペリスタポンプ
    (アトー)
  • HPLCシステム
    (Alliance Bio、ウォーターズ)
  • ゲルろ過カラム
    TSK-GEL G3000SWXL(7.8×300mm 東ソー)
  • 電気泳動装置
    (Proteian III、バイオラッド)

実験方法

<精製>
精製は室温で流速0.5mL/minで行った。
  1. 濃縮培養上清試料0.5mLをPBSで10倍希釈し、試料5mL(蛋白質濃度3mg/mL)を調製。
  2. カラムをPBSで平衡化  5CV
  3. 試料全量をカラムに添加。
  4. PBSで洗浄  5CV
  5. 25mMオクタン酸ナトリウム溶液で洗浄  10CV
  6. 超純水で洗浄  10CV
  7. 50mM酢酸ナトリウムバッファーpH4.0で溶出  10CV

<ゲルろ過による純度検定>
以下の条件によりゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより分画を行い、
得られたクロマトグラムのピークの面積の比より、最終精製産物の純度を評価した。
ゲルろ過条件
  • 流速  0.5mL/min
  • 溶媒  50mMリン酸カリウムバッファー、300mM 塩化ナトリウム
  • pH(溶媒)  6.9
  • 検出波長  280nm
  • カラム温度  室温
  • サンプル温度  10℃
  • 分析試料量  20μL
  • 分析時間  30min

<SDS PAGEによる純度検定>

最終精製産物および中間製生産物は、希釈率に合わせて体積を調整の後にSDS電気泳動を行った。

結果

  • ゲルろ過のクロマトグラムより最終精製産物のIgG純度は89.2%であった。
  • SDS PAGEの泳動像より、アルブミン除去のために追加した工程においてもIgGの解離は起こらず、これら工程ではアルブミンのみが溶出された。

考察

AcroSep MEP HyperCelからのアルブミンの除去(溶出)にはオクタン酸ナトリウムによる洗浄が有効である。このアルブミン除去法を用いることにより、AcroSep MEP HyperCelにより、無血清培地由来のハイブリドーマ上清から、初期精製としては充分な純度のIgGが得られる。

<参考>
MEP HyperCelによるIgG精製(オクタン酸ナトリウム洗浄工程なし)


FT: フロースルー
洗1: PBS洗浄
洗2: PBS洗浄
洗3: PBS洗浄
溶1: 酢酸ナトリウム溶出
溶2: 酢酸ナトリウム溶出












2010-06-09 10:48:54

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