IPTG不要のAuto Induction培地のパフォーマンス検証!

■データ協力:お茶の水女子大学理学部生物科 内山綾子先生

概要

前回、マーカーを用いた実験で、IPTG不要のAuto Induction培地によって効率よくタンパク質が発現できる可能性が示唆されました。今回は更にルシフェラーゼとリポコルチン(副腎皮質ホルモンによって転写されるホスホリパーゼA2と呼ばれる酵素を抑制する働きがあるタンパク質)を実際にコードされたプラスミドを用いて実際のタンパク質が効率よく発現されるかを検証してみました。

材料と方法

タンパク質抽出試薬:メルク(株)

実験機器:タイテック(株)

培養容器:コーニングインターナショナル(株)

実験プロセス


氷上で溶かしたBL21(DE3)コンピテントセルに、pET-52 3C/LIC + Lipocortin、pET-52 3C/LIC + Rlucをそれぞれ入れて、氷上で30分放置した。42℃のヒートブロックで45秒インキュベートしたのち、氷にさして急冷した。


10倍量のSOC培地を加えて、アンピシリンを含むLBプレートに塗り広げた。


37℃に一晩おいて、それぞれのプラスミドが形質転換されたコロニーを得た。


得られたコロニーをつついて、アンピシリンを含むLB培地の入った試験管に入れ、 ウォーターバスに斜めに差して、37℃、160RPMの往復振盪で培養して、スターターとした。


スターターを同量ずつ、アンピシリンを含むLB培地を入れたフラスコ2本に入れた。片方のフラスコにはOvernight Expressを入れた。37℃、300RPMの旋回振盪し、OEを入れない通常法のフラスコは、濁度をモニターして、OD600が0.6を超えた時点でIPTGを1mM添加した。
一定時間後に菌液を回収し、遠心して上清を除いて、BugBusterとBenzonase Nucleaseを加えて、タンパク質を抽出し、遠心して可溶性画分(上清)と不溶性画分(沈殿)に分けた。
一度SDS-PAGEを行い、目的タンパク質がどちらも不溶性画分にあることを確認したので、沈殿をHis・Bind Kitsを用いて精製した。


集菌してそのままサンプルバッファーで処理したトータルタンパク質と、His・Bind Kitsで精製してサンプル処理したタンパク質を、 SDS-PAGEで分離した。泳動の終わったゲルをCBB染色液の入ったタッパーに入れて、30分間振盪してタンパク質を染色した。
実験プロセスの詳細は「IPTG不要のオートインダクションは本当に便利なの?」をご覧ください。




予備実験として、通常法とOvernight Expressの添加による増殖曲線の変化を、バッフル付きフラスコ、バッフルなしフラスコの両方で検討した。37℃、300RPMの旋回振盪で培養した結果を示す。OEの添加によって、対数増殖期の傾きが大きくなり、特にバッフル付きフラスコでは通常法の3倍ほどのODが得られた。一方、通常法では、バッフルの有無による差は見られなかった。
上記の結果からルシフェラーゼは37℃で12時間、リポコルチンは37℃で8時間培養した。集菌時のそれぞれのODを下表に示す。


結果と考察

どちらのタンパク質も、ODの増加に伴って得られた目的タンパク質の量も増加していた(図1、図2参照)。リポコルチンは、12時間まで培養を続けると、全タンパク質中の目的タンパク質の発現量が極端に少なくなってしまった。原因として、pET-52がアンピシリン耐性であるためアンピシリン存在下で培養を行ったが、増殖するにつれてアンピシリンは分解され、プラスミドの落ちた菌が過増殖してしまった可能性が考えられる。プラスミドが落ちやすい場合は、培養条件やプラスミドの選択条件などの検討が必要である。
今回の実験ではルシフェラーゼとリコポルチンをコードしている実際の遺伝子を用いて実験を行った。結果として通常のIPTGを用いた実験系と比較して、簡単な条件検討であっても2倍から3倍のタンパク質の収量が得られることが分かった。また培養曲線を作成する過程で、OverNight Express培地の培養がエアレーションによって変化することが強く示唆された。これは振とう培養の振幅や回転数がタンパク質の発現の収量に大きく影響を与えていることを示してる。



2007-07-05 15:41:48

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