可溶性タンパク質のインダクションに最適!
Cherry Codon Kitの検証


■編集:NPO法人サイエンス・コミュニケーション
■実験協力:お茶の水女子大学 内山 綾子

趣旨

大腸菌を用いたタンパク質の発現系は、タンパク質を安価で大量に発現するうえで有用な手法である。しかし、サンプル数が増加した場合、インダクションに伴うIPTGの滴下、不溶性タンパク質の確認作業、その後のタンパク質の可溶化作業が効率化を進める上で課題であった。 Cherry Codon Kit (DELPHI genetics製:日本ではコスモバイオから発売)は、タンパク質が可溶性であった場合、タグとして付いているCherryが発現し培養液が赤くなることでその判断ができる。今回私たちはその有用性について検証してみた。

材料と方法

試薬及びツール
機器

実験プロセス

Cherry Codon Kit (DELPHI genetics製)に付属のベクター、pSCherry2と、CherryタグのつかないコントロールであるpSCodon1.2に、制限酵素認識配列をつけて増幅したインサート(Lipocortin、Rluc)をくみこんだ。それぞれのベクターを、Cherry Codon Kit中のクローニング用コンピテントセルであるCYS21株に形質転換し、LBプレートに播いた。37℃で一晩培養し、生えたコロニーをつついてPCRを行い、インサートが組み込まれたベクターをもつコロニーを選択した。選択したコロニーをつついて、LB培地で一晩少量培養し、プラスミド精製を行った。

得られたプラスミドを、Cherry Codon Kit中の発現用コンピテントセル、SE1株に形質転換し、LBプレートに播いて、37℃で一晩、培養した。生えたコロニーをつついてLB培地で少量培養し、これをスターターとした。

自動発現誘導培地であるStaby Switch(DELPHI genetics製)、または発現誘導しないコントロールとして1%グルコース含LB培地を3mLずつ、試験管に準備し、前培養したスターターを30 μL加えた。ウォーターバスに斜めにさして、37℃で一晩、160 rpmの往復振盪下で培養した。

培養後の濁度を測ったところ、LBでは3.2〜3.4、Staby Switchでは3.9〜4.3まで増殖していた。菌液の色は、もともとのLBとStabySwitchの色の違いのみで、発現による色の違いはみられなかった。

菌液を回収し、遠心したところ、Cherryタグを融合した目的タンパク質を発現したサンプル(一番右)でのみ、赤い沈殿が得られた。

培養液を除き、Benzonase Nuclease(Novagen製)を添加したBugBuster Protein Extraction Reagent(Novagen製)でタンパク質を抽出した。

遠心して可溶性画分(sup)と不溶性画分(ppt)に分けた。可溶性画分に赤色が移ってきているのが確認できた。supとppt、また菌体そのもの(total画分)をそれぞれサンプル処理し、SDS-PAGEをおこなった。

泳動の終わったゲルをCBB染色液の入ったタッパーに入れて、30分間振盪してタンパク質を染色した。

Lipocortinの発現

m: marker
前: 発現誘導をかけていないもの
t: total
s: sup
p: ppt

Rlucの発現

m: marker
前: 発現誘導をかけていないもの
t: total
s: sup
p: ppt

考察

大腸菌でタンパク質を発現させる場合、しばしばその可溶性が問題となる。Cherryタグは可溶性が高く、融合させることで目的タンパク質を可溶性画分に回収することが可能となる。今回の結果から、Rlucは内在性のタンパク質のバンドと重なってしまい、判別が困難であるが、Lipocortinでは、pSCodonベクター(Cherryタグなし)でほぼすべて不溶性画分にあった目的タンパク質が、Cherryタグをつけることで可溶性画分に移行するのを確認できた。 ベクターにはアンピシリン耐性遺伝子が組み込まれているが、アンピシリンは安定性が高くないために、培養中に枯渇してしまう。ベクターが落ちやすい場合、落ちた菌の方が増殖が速いために過増殖となり、結果として菌量に対する発現タンパク質の収量は少なくなる。より安定に目的タンパク質を得るために、このキットのpSCodonベクター、pSCherryベクターにはccdA(解毒)遺伝子が、コンピテントセルにはccdB(毒素)遺伝子が組み込まれている。ccdA非存在下でccdBが大腸菌に対し毒性を示すので、ベクターがおちた菌は増殖することができない。今回は培養液にアンピシリンを添加せずに培養をおこなったが、非常に安定して目的タンパク質を得ることができた。 発現誘導には、IPTG添加不要の自動発現誘導培地であるStaby Switchを用いた。培養後の濁度を測定したところ、どの株もLB培地より高い濁度を示していた。よりエアレーションのよい条件下で培養することで、さらによい増殖を得られるかもしれない。今回は増殖を比較するために、前培養した菌液をスターターとして用いたが、コロニーやグリセロールストックをつついてStaby Switchに入れ、そのまま増殖、発現誘導させることも可能である。
プリンタ出力用画面

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